変形性股関節症と正しく向き合う会の代表理事、井口です。
今日は、人工股関節手術における3つのアプローチ方法についてお話します。
手術を検討している方はぜひご覧下さい。
人工股関節手術における3つのアプローチ方法
人工股関節手術における3つのアプローチは、「皮膚のどこを切るか」「筋肉をどうするか」の違いで、主に3つの方法があります。
1.後方アプローチ
これは、お尻から太ももの外側を切り、股関節の後ろからアプローチする方法です。
手術時の患者さんの体勢は側臥位(横向き)となります。
昔からある方法で、短外旋筋群(たんがいせんきんぐん)という後方の筋肉を切るため動きに制限がでるという特徴があります。
また、深く曲げると脱臼しやすくなる場合もあるため、このアプローチでは正座や和式トイレ等を制限や禁止することが多いです。
ただ、脱臼は、一旦切った筋肉を修復することで軽減できるようになっています。
後方アプローチは医者の経験値の差が出にくいことも特徴で、股関節部分の骨の変形や大腿骨の再置換の時には、後方アプローチが効果的な場合もあります。
2.前方系アプローチ
前方系アプローチには、前方アプローチ及び前外側アプローチがあります。
前方アプローチとは、股関節の前側から皮膚を切開する方法です。
手術時の患者さんの体勢は、仰向け(仰臥位:ぎょうがい)です。
筋肉や靭帯を切らないために術後の回復が早く、リハビリ期間や入院期間が短くなる特徴があります。
また、前外側アプローチとは、太ももの前外側から皮膚を切開し筋肉や靭帯を切らないで行う方法です。
前方アプローチとほぼ変わらない方法と言えます。
3.側方アプローチ
側方アプローチとは、股関節の外側から皮膚を切開して手術を行う方法です。
手術時の患者さんの体勢は横向き(側臥位:そくがい)です。
手術する場所が見やすく、後方アプローチほど脱臼の心配が少ないです。
ただし、骨や筋肉を一度切るため術後に筋力が低下します。
結果、リハビリに多少時間がかかってしまいます。
このように
人工股関節手術では大まかに3つのアプローチ方法があります。
また、最近の人工股関節手術は、最小侵襲手術(MIS)と呼ばれる手法が主流になっています。
この手法は傷口が小さくて筋肉を切らない手術です。
そのため痛みが少なく、リハビリがやりやすいです。
これらの情報に接した患者さんがよく考えるのが
「MIS手術で前方アプローチがいい」ということです。
ただ、MIS手術は技術的に難しいです。
そのため、手術の執刀医の手術経験というものが大変重要になってきますし、筋肉や靭帯を切っていないからと言ってリハビリをしなくてもよいということにはなりません。
執刀医がリハビリを重視していなければ、術後の回復が進まないこともあるからです。
また、病院によっては、MISと言っているが実際には筋肉を切っている場合もありますので、注意が必要です。
昨年10月に開催された股関節学会の発表では
日本では、前方アプローチが40%、側方アプローチが20%、後方アプローチが40%という割合とのことでした。
私の場合は手術の傷口から確認すると側方アプローチのようですが、術後の回復は早く、2回目の手術の時には手術の翌日には、普通歩行ができていました。
これは、1回目の手術後から自宅でのリハビリをずっと続けた結果だと思います。
結局のところ人工股関節手術は
手術のアプローチ方法うんぬんではなく、執刀医の腕とリハビリが一番重要なポイントとなってきます。
後で後悔しないためにも、手術を決める前に「どんな方法で手術をするのか」「どうしてその方法がよいのか」「術後どんなことに気をつけたらよいのか」について、しっかりと確認しておくことが大切です。
この記事が、変形性股関節症の患者さんにとって少しでもお役に立てればうれしいです。
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