変形性股関節症と正しく向き合う会の代表理事、井口です。
変形性股関節症の患者さんが人工股関節手術を考える際、知っておくべき基礎知識があります。
基本的なところでは、人工関節置換術、骨切り術といった手術の種類に関する知識などですが、最近質問を受けることがあるのが「人工股関節手術のアプローチ方法」について。
「手術のアプローチ方法」は患者にとっても聞きなれない言葉なのか、具体的な内容をイメージしたり、自分にとってベストな方法をどう判断すればよいのか迷うことが多いようです。
そこで今回、人工股関節手術のアプローチ方法に関する基礎知識をお伝えします。
手術を考える上では大事な知識ですので、ぜひ理解してください。
人工股関節手術のアプローチ方法、とは
一言で言えば”手術をどのように行うか”ということです。人工股関節手術の場合には「皮膚のどこを切るか」「筋肉をどうするか」の違いで、複数のアプローチ方法が存在します。
大まかに言えば、前方系アプローチ(前方アプローチ/前外側アプローチ)、側方アプローチ、後方系アプローチがあり、股関節学会の発表などによると、日本では、前方系アプローチ40%、側方アプローチ20%、後方アプローチ40%という割合で行われているようです。
前方アプローチ
前方系アプローチの一つで、股関節の前側から皮膚を切開します。
患者は仰向けで手術を受けます。
前方系アプローチの特徴としては、筋肉や靭帯を切らずに手術を行うことが挙げられます。
そのため、術後の回復が早く、リハビリ期間や入院期間が短くなる傾向にあります。
前外側アプローチ
こちらも前方系アプローチの一種です。
前方アプローチとの違いは切る場所で、太ももの前外側から皮膚を切開します。
患者は仰向けで手術を受けます。
前方系アプローチのため、筋肉や靭帯は切りません。
そのため、術後の回復が早く、リハビリ期間や入院期間が短くなります。
側方アプローチ
側方アプローチは、股関節の側方から皮膚を切開して手術を行う方法です。
患者は横向きで手術を受けます。
このアプローチは手術する場所が見やすいため、次にお伝えする後方アプローチと比較して脱臼の可能性が低くなります。
ただ、骨や筋肉を切る必要があるため、術後の筋力は低下します。
そのため、リハビリに時間がかかる傾向にあります。
後方アプローチ
後方アプローチは、お尻から太ももの外側を切開し、股関節の後ろから手術を行う方法です。
側方アプローチ同様、患者は横向きで手術を受けます。
後方アプローチは昔からある方法なのですが、股関節の後ろ側にある短外旋筋群という筋肉を切るため、動きに制限がでます。
また、股関節を深く曲げると脱臼しやすくなる傾向があります。
正座や和式トイレ等の行動制限(禁忌動作)がかかることが多いです。
ただ、後方アプローチには、医者の経験値の差が出にくいという利点があります。
股関節部分の骨の変形や大腿骨の再置換の際など、後方アプローチが効果的な場合があります。
最小侵襲手術(MIS)
最近の人工股関節手術では、最小侵襲手術(MIS)と呼ばれる手法が主流になっています。
これは、傷口が小さい・筋肉を切らない、という特徴をもつ手法で、術後の痛みが少なく、リハビリを行いやすいという利点もあります。そのため、MISを知った患者は「MIS手術で前方アプローチがいい」と考えるケースがしばしば見られます。
ただ、注意すべき点があります。
それは、MISは技術的な難易度が高いため、執刀医の手術経験が非常に重要となる点です。
また、執刀医がリハビリを重視していなければ、術後の回復が進まないこともあります。
私のアプローチ方法
ちなみに、手術の傷口から確認したところ、私の場合は側方アプローチでした。
術後の回復は非常に早く、特に2回目の手術では、手術翌日に普通歩行ができていました。
ただ、これはアプローチ方法のおかげもあるかもしれませんが、1回目の手術後から自宅でのリハビリをずっと続けた結果が最大の要因だと考えていますので、その点に注意してください。
手術を考える患者さんは
ぜひ今回紹介した「人工股関節手術のアプローチ方法」の基礎知識を押さえてください。
それぞれのアプローチ方法には、必ずメリットとデメリットがありますので、必ず医師に確認するようにしてください。
もし手術のことで悩むようであれば、個別相談付きのメディカル・アロマケア個別体験会も開催しております。うまく活用してください。
この記事が、変形性股関節症の患者さんにとって少しでもお役に立てればうれしいです。
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