変形性股関節症と正しく向き合う会代表理事の井口です。
変形性股関節症の手術を控えている方が誤解しがちなのが、リハビリのこと。
特に人工股関節の手術前は、神経質になるものです。
「リハビリって何をするの?」
「リハビリって本当に意味があるの?」
「リハビリって何だかつらくて大変そうなイメージ・・・」
私自身の手術前の時期を思い返しても、そうでした。
そこで今日は、変形性股関節症の手術を控えているあなたに向けて、私自身が手術前に知っておきたかった「変形性股関節症のリハビリ」のことをお伝えしようと思います。
ぜひご覧ください。
変形性股関節症の「リハビリ」は何をするのか?
変形性股関節症のリハビリは、時間の経過とともにリハビリの内容や目的が変わってきます。
具体的には以下のタイミングです。
- 人工股関節の手術前
- 人工股関節手術終了後の入院中
- 退院後
1.人工股関節の手術前のリハビリ
(リハビリ目的)
手術前のリハビリの目的は、術後の回復を早めることです。
これは、私の経験から申し上げると、そんなにつらいものではありません。
むしろ、かなり悪くなった股関節の状態を少しでも良くするため、軽めの運動を継続して毎日おこなうことが大切だと実感しました。
術後、より柔らかい関節を作るためにも、リハビリは手術前から行うことが非常に重要です。
(リハビリ内容)
手術を受けることが決まった日から、病院が股関節周りの筋肉を鍛えるための運動や体操などを指導していきます。
例えば、
・ 椅子に座って膝を交互に上げる運動
・ 椅子に座って膝を交互にしっかり伸ばす運動
・ 椅子に座ってつま先上げとつま先立ちをする運動
といった簡単な運動です。
もちろん、運動や体操のメニューについては入院する病院ごとに異なっている場合がありますが、入院中は、理学療法士がマンツーマンで動き方の訓練やリハビリ指導を行います。
2.人工股関節手術終了後の入院中のリハビリ
(リハビリ目的)
手術後のリハビリ目的は大きく2つあります。
- 退院時に通常の生活ができる状態まで回復する
- 人工関節の動きを再学習、再獲得する
手術のリハビリは、つらくて大変そうだし、股関節が痛くなくて歩ければそれで良いのではないかと思われる方もいると思います。しかし、股関節を動かさないでいると、関節の動きが制限され、結果として、歩行や日常生活動作に支障をきたすことになります。
手術をしても自分の体は、手術前の体の使い方(動き方)を記憶しているため、癖として残ってしまうのです。結果として、リハビリを行わないと退院後に日常生活が普通に送れなくなる可能性が高いのです。
例えば、私の場合は、歩行時に体が傾いてしまうという癖が残ってしまい、大変苦労しました。また、人工関節そのものには感覚がないため、新しい関節の動きを再学習、再獲得する必要があります。
(リハビリ内容)
入院中のリハビリは、
・ 枕をして仰向けの状態で両膝を立てて、ストレッチする側の足を抱えて30秒~1分止める運動
・ 仰向けで枕をして両膝を90度に曲げて、膝を胸に近づけるようにする運動
・ 椅子に腰をかけて、膝を開く⇔閉じるをゆっくり繰り返す運動
といったことをおこなうケースが多いです。
(私の経験談)
私の入院期間は約3週間。毎日1.5~2.0時間をリハビリに費やしました。
理学療法士の指導時間は、1.5時間ぐらいですが、その他に毎日30分ぐらいは、自主的に、病室で習ったことを復習していました。入院中は、汗だくになるまで運動するので、病室に戻ると、気分がスッキリして心地よい疲労感で、夜はぐっすり眠ることができました。
どんな状態で退院したいかをいつもイメージしながら運動を続けていたので私にとって、リハビリは、楽しくて待ち遠しい時間でした。今考えると、入院中のリハビリで運動の楽しさを知ることができました。
お陰様で、退院時には、杖も使わず、自宅まで1時間半の道のりを電車に乗って普通に帰ることができました。よく驚かれるのですが、退院したその日から家事などは全てこなすまで回復していました。
私の主治医の「退院時には、通常の生活ができる状態まで回復させる」という方針には本当に感謝しています。
3.退院後のリハビリ
(リハビリ目的)
退院後のリハビリの目的は、基本的には、入院中の目的と同じです。
つまり、
・ 退院後、通常の生活ができる状態まで回復すること
・ 人工関節の動きを再学習、再獲得すること
の2つになります。
そして、退院後のリハビリは、継続が本当に大事です。
「継続は力なり」の格言をこれほど体感できる状況は他にはありません。
(リハビリ内容)
- 椅子に座って膝を交互に上げる運動
- 椅子に座って膝を交互にしっかり伸ばす運動
- 椅子に座ってつま先上げとつま先立ちをする運動
- 枕をして仰向けの状態で両膝を立てて、ストレッチする側の足を抱えて30秒~1分止める運動
- 仰向けで枕をして両膝を90度に曲げて、膝を胸に近づけるようにする運動
- 椅子に腰をかけて、膝を開く⇔閉じるをゆっくり繰り返す運動
といった手術前と入院中におこなったリハビリ運動を繰り返し行なうケースが多いです。
(私の経験談)
私の場合、手術した病院が自宅から遠かったので、リハビリ通院はしませんでした。
むしろ、入院中に教わったリハビリ運動を毎日、真面目に自宅でおこなっていました。
主治医からは、もう片方の股関節も1年半後には手術が必要だと言われていましたので、毎日1時間ぐらいかけてリハビリメニューをこなしていました。
その結果、2回目の手術後の翌日には、平行棒も使わずに、普通に歩けてしまいました。
何と、術後たった1週間で、廊下を通常歩行するまで回復してしまいました。
主治医からは、「面会者と全く区別がつかないくらいの歩き方だね。」とお褒めの言葉をいただきました。これも自宅でのリハビリ継続の賜物だと思います。
変形性股関節症の「リハビリ」について
全体像を理解していただけたでしょうか?
この記事を通じて、変形性股関節症の手術を控えている患者さんが「リハビリ」のことを知り、リハビリに前向きに取り組もうという気持ちになっていただければ本当にうれしく思います。
それでは、また、次回の記事でお目にかかりましょう。