変形性股関節症と正しく向き合う会の代表理事、井口です。
前回に引き続き、日本股関節学会学術集会に参加して学んだことをお伝えします。
今回のテーマは、変形性股関節症における保存療法の考え方について。
一言でまとめると、保存療法に関する考え方はこの10年以上全く変わっていないようでした。
以下、今回の日本股関節学会学術集会で発表されていた変形性股関節症の保存療法の考え方についてまとめましたので、ぜひ参考にして下さい。
現在行われている保存治療を列挙してみると
患者教育、運動療法、温熱療法、NSAids内服、各種サプリメント、関節内ステロイド注入、ヒアルロン酸注入があります。
まずは、下記にそれぞれの治療方法に対する学会の見方をお伝えします。
1.患者教育
変形性股関節症についての理解、日常生活動作の指導、杖の指導、減量や家庭での運動指導が挙げられます。
これらは、痛みの緩和には有効ですが、長期的な効果や変形性股関節症の進行防止については、期待できません。
2.運動療法
痛み緩和、筋力増強による機能障害の改善、関節の安定や可動域改善を目的に行われます。
ただし、病状が進行した場合には、症状が悪化したり、変形性股関節症の進行を早める可能性もあります。
3.温熱療法
短期的なQOL(生活の質)の改善に有効な場合があります。
ただし、変形性股関節症の治療効果は不明です。
4.NSAids内服
痛みとADLの改善が見られるが、変形性股関節症の進行防止効果はありません。
副作用を考えると、NSAids内服の長期使用は慎重にすべきです。
5.各種サプリメント
コンドロイチン、グルコサミン、アボガドの科学的な有効性は認められていません。
6.関節内ステロイド注入
短期的には痛み緩和、機能障害の改善は見られるが、効果の持続期間は数週間となっています。
また、人工股関節手術前の関節内ステロイド注入は、術後の感染リスクがあるため推奨されていません。
関節内ヒアルロン酸注入は、その効果は確立しておらず、保険の適用はされていません。
このように
保存療法の内容は、「ただ進行していくのを待つだけ」という私が患者だった10年以上前からほとんど変わっていないということが分かりました。
今回の股関節学会において感じたことは
手術療法については、著しい進歩が見受けられますが、保存療法や術後のリハビリテーションについてはそれほど進んでいないのではないか、ということです。
これらについては、今後の課題となるでしょう。
変形性股関節症の患者さんは、このような現状をしっかりと把握した上で今後の治療選択を考えていく必要があると思います。
この記事が少しでも役立つことを願ってやみません。
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